日本語能力試験(JLPT)とは?受験までの流れや費用・N1〜N5のレベルの違いや受けるメリットを解説

社内の外国人スタッフの日本語レベルを客観的に測るために、おすすめなのが「日本語能力試験(JLPT)」の受験です。年2回実施され、N1〜N5の5段階で日本語能力(読む・聞く)の認定を受けることができます。

日本人にとっては馴染みの薄い日本語能力試験(JLPT)を、自社の外国人スタッフに薦めるためには、まず自社の人事担当者・直属のマネージャーが概要を理解する必要があるでしょう。

記事では、そんな日本語能力試験(JLPT)の概要から費用・受験日・受験までの流れやN1〜N5のレベルの違いや受験メリットをまとめてお伝えします。

日本語能力試験(JLPT)とは

日本語能力試験(JLPT)とは、国際教育支援協会と日本国際教育支援協会の2団体が共同で開始した、日本語を母語としない人を対象にした日本語能力を認定する語学検定試験です。1984年から実施されており、日本国内を含む世界85カ国・249都市で受験ができます(2018年時点のデータ)。

試験の実施は基本的に毎年7月と12月の年2回。日本語教育業界では「JLPT」「日能試」などと呼ばれ、英語の名称は「Japanese-Language Proficiency Test」です。

受験者の推移について

日本語能力試験(JLPT)が誕生した1984年から、試験の受験者数は年々増加の傾向にあります。以下は日本語能力試験(JLPT)のホームページから引用した1984年からの受験者数の推移です。

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2012年・2013年ごろに少し受験者数は落ち込みましたが、そこから一気に増加し、2018年時点では年間受験者数は100万人を超えています。このうち、約63%は日本国内で受験し、約37%は海外で受験しています。

2009年より現在まで続く年2回の試験回数がスタートしたため、2009年の受験者数は前年の2008年より著しく伸びていることがわかります。では、日本語能力試験(JLPT)を受験する人はどのような理由で受けているのでしょうか?

受験理由の内訳

日本語能力試験(JLPT)のホームページによると、受験理由は「進学」「就職」「力試し」と分散している傾向にあることが報告されています。以下は受験理由の内訳です。

受験の理由全体における割合
自分の実力を知りたいため33.2%
自分の仕事やこれからの就職・昇給・昇進に役立てるため(自国において)23.1%
自分の仕事やこれからの就職・昇給・昇進に役立てるため(日本において)10.3%
大学や大学院入学に必要であるため(日本への留学)10.0%
大学や大学院入学に必要であるため(自国において)7.5%
その他の教育機関での入学や能力証明に必要であるため(自国において)4.6%
その他の教育機関での入学や能力証明に必要であるため(日本において)4.5%
その他5.8%
無回答1.0%

受験の実施日

2022年の日本語能力試験(JLPT)の実施日は、第1回が7月3日(日)で第2回が12月4日(日)となっています。

受験の費用

日本語能力試験(JLPT)の受験費用は日本国内で受ける場合、一律で6,500円(税込)です。受験料の支払方法は、「クレジットカード(一括払い)」「銀行振込(ペイジー)」「コンビニエンスストアでの支払い」の3つです。

受験全体の流れ

日本語能力試験(JLPT)は現在年2回行われるため、第1回試験と第2回試験の2つのパターンで受験全体の流れをご説明します。全体の流れを以下の表にまとめました。

【日本国内で受験する場合】
受験者が行うこと第1回試験(7月実施)のスケジュール第2回試験(12月実施)のスケジュール
1. 試験の実施日程を日本国際教育支援協会のWebサイトで確認する2月上旬〜7月上旬〜
2. 日本国際教育支援協会のWebサイトからMyJLPTの登録を行う3月中旬〜8月中旬〜
3. 日本国際教育支援協会のWebサイトから申し込み、受験料を支払う3月下旬〜4月中旬8月下旬〜9月中旬
4. 日本国際教育支援協会から受験票が届く6月中旬11月中旬
5. 試験を受ける7月上旬12月上旬
6. 日本国際教育支援協会から試験結果を受け取る(MyJLPTにログインし、試験結果を確認可能)9月上旬2月上旬
【海外で受験する場合】
受験者が行うこと第1回試験(7月実施)のスケジュール第2回試験(12月実施)のスケジュール
1. 試験を受ける国・地域の実施都市と実施機関を調べる(海外の実施都市・実施機関一覧3月前に余裕をもって対応しておく8月前に余裕をもって対応しておく
2. 実施機関に申し込み方法を確認し、受験案内(願書)を入手する3月前に余裕をもって対応しておく8月前に余裕をもって対応しておく
3. 受験案内をよく読んで、実施機関の指示に従って申し込み、受験料を支払う(後日、実施機関から受験票が届く)3月〜4月ごろ8月〜9月ごろ
4. 試験を受ける7月上旬12月上旬
5. 実施機関から試験の結果を受け取る9月ごろ3月ごろ

日本語能力試験(JLPT)の特徴

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今や多くの外国人が受験している日本語能力試験(JLPT)ですが、他の日本語の能力を測る試験とは違い、どのような特徴があるのでしょうか。日本語能力試験(JLPT)が支持される理由とも言える、その主な特徴を3つに分けてご説明します。

課題遂行のためのコミュニケーション能力を測る試験

日本語能力試験(JLPT)では、日本語の知識を用いて日常的なコミュニケーション上の課題を遂行できるかに重きを置いています。もちろん、日本語の文字や語彙・文法をどれくらい知っているかも大切ですが、最終ゴールを「コミュニケーション上の課題解決」に設定しているのです。

そのため試験では、日本語の文字や語彙・文法をどれくらい知っているかを測る「言語知識」に関する内容と、日本語の知識を実際のコミュニケーションでどのくらい使えるかを測る「読解」「聴解」の3つの内容を含んでいます。

試験レベルはN1からN5の5段階に分けられる

日本語能力試験(JLPT)は、レベル別に5段階のN1・N2・N3・N4・N5に分けられます。N5から順にレベルは易しく、N1がもっともレベルが高くなります。

各レベル別の認定の目安は後ほど詳しくご説明しますが、このように細かくレベルが分かれていることで、受験者は自分の日本語レベルを細かく認識することができます。

尺度得点で点数が測られる

毎年2回行われる日本語能力試験(JLPT)では、当然ですが毎回試験内容は異なります。試験内容は運営側が慎重に問題を作成していますが、それでも試験によって難易度が毎回変動してしまうことは避けられません。その際に「素点」と呼ばれる、受験者が正解した解答数で得点を算出すると同じ実力でも回によって点数が変わってしまいます。

このような回ごとの点数のブレを防ぐため、日本語能力試験(JLPT)では「尺度得点」という採点方式を導入しています。尺度得点とは、等化の仕組みを用いてどの試験でも同じ尺度で点数が算出される採点方法のことです。尺度得点により、どの回を受験した人であっても公平に得点に表されるのです。

N1〜N5の日本語能力の目安について

日本語能力試験(JLPT)は、N1・N2・N3・N4・N5の5段階のレベル別に分かれることは先ほどご説明した通りです。日本語能力試験(JLPT)では、「読む」「聞く」の2軸で日本語レベル感を定めています。

以下は、日本語能力試験(JLPT)のホームページに記載されている各認定の目安です。

N1
全体のスキル度幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
読む・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論などの論理的でやや複雑な文章または抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる
聞く・幅広い場面において自然なスピードのまとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる

<詳しくはこちらをお読みください>

日本語能力試験(JLPT)のN1レベルとは?レベルの目安や問題例を紹介

N2
全体のスキル度日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む・幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事、解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる
聞く・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードのまとまりある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる

<詳しくはこちらをお読みください>

日本語能力試験(JLPT)のN2レベルとは?レベルの目安や問題例を紹介

N3
全体のスキル度日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる・日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる
聞く・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる

<詳しくはこちらをお読みください>

日本語能力試験(JLPT)のN3レベルとは?レベルの目安や問題例を紹介

N4
全体のスキル度基本的な日本語を理解することができる
読む・基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる
聞く・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる

<詳しくはこちらをお読みください>

日本語能力試験(JLPT)のN4レベルとは?レベルの目安や問題例・おすすめ教材を紹介

N5
全体のスキル度基本的な日本語をある程度、理解することができる
読む・ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる
聞く・教室や身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる

<詳しくはこちらをお読みください>

日本語能力試験(JLPT)のN5レベルとは?レベルの目安や問題例を紹介

※ 参考元:日本語能力試験 JLPT「N1〜N5:認定の目安」

日本語能力試験(JLPT)のメリット

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日本語能力試験(JLPT)を受験することは自分の現時点の日本語能力を客観視できるだけでなく、日本企業への就職時のアピールや資格認定、さまざまな優遇措置を得られるなどのメリットがあります。具体的なメリットには、以下のようなものがあります。

出入国管理上の優遇措置を受けるためのポイントがつく

日本語能力試験N1とN2の合格者に対して、「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」にてポイントが付与されます。N1の合格者は15ポイント、N2の合格者は10ポイントが付与。同制度では合計70ポイント以上の場合に優遇措置が与えられます。

「高度人材に対するポイント制」とは、高度外国人材の受け入れ促進のために設けられた制度です。高度外国人材を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントが設定されます。

合計70ポイントで優遇措置が与えられることを考えると、N1またはN2の合格を目指すことは優遇措置の条件取得を有利に進めることがわかります。

日本の医師等国家試験を受験する条件のひとつを得られる

海外で医師免許を持っている人が、日本の医師等国家試験を受験するためには、日本語能力試験N1の認定が必要となっています。この条件に当てはまる医療系の資格は医師国家試験以外にも以下のようなものがあります。

  • 歯科医師
  • 看護師
  • 薬剤師
  • 保健師
  • 助産師
  • 診療放射線技師
  • 歯科衛生士
  • 歯科技工士
  • 臨床検査技師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 視能訓練士
  • 臨床工学技士
  • 義肢装具士
  • 救命救急士
  • 言語聴覚士
  • 獣医師

※ 参考元:厚生労働省「医師国家試験受験資格認定について」

日本の准看護師試験を受験する条件のひとつを得られる

海外の看護師学校養成所を卒業した人が、日本の准看護師試験を受験するためには、日本語能力試験N1の認定が必要となっています。このように日本で医療系の職種につくことを目指す場合、日本語能力試験の存在は外せないのです。

日本の中学校卒業程度認定試験で一部の試験科目が免除される

外国籍の人が日本の中学校卒業程度認定試験を受験する場合、日本語能力試験N1またはN2に認定されていると「国語」の試験が免除されます。家族の都合などで日本で暮らすことが想定される外国籍の学生にとっては、受験のメリットがあります。

日本企業において採用・昇進しやすくなる

日本企業に就職活動を行う際、採用時の条件として日本語能力試験の認定レベルを導入している企業も多いです。また必須条件でなくとも、試験で日本語レベルが客観的にわかっている外国人人材は、企業に好印象を与えることと思います。

すでに日本企業に勤めている外国人社員も日本語能力試験(JLPT)を継続して受験し、認定レベルが上がっていることを会社に伝えることで評価に繋がり、昇進しやすくなるでしょう。

留学生の場合、試験結果で単位を取得できる場合もある

日本の大学・専門学校に留学している人の場合、日本語能力試験(JLPT)の認定レベルを一定取得することで学校の単位を取得できるケースもあります。

また、留学生がそのまま日本の企業に就職活動する際でも、日本語能力試験(JLPT)の認定を受けているという事実は就職活動をとても有利に進めることが多いです。

日本語の伝える力は『伝わる日本語会話力評価』で測るのがおすすめ

日本語の発話力や応答力・場面描写力・文章構成力・タスク遂行力などの「伝わる日本語」を操るための評価テストに『伝わる日本語会話力評価』があります。本テストでは30分のテスターとインタビューテストを通じて評価が行われます。

『伝わる日本語会話力評価』は、日本語能力試験(JLPT)とは違い、読解力に寄らないバランスの取れたコミュニケーション能力を判定できるテストです。日本語能力試験(JLPT)と合わせ、ぜひこちらも日本語能力を測るために受験されてみてください。

▶️『伝わる日本語会話力評価』について詳しくはこちら

日本語能力試験(JLPT)で年1回 成長を確認しよう

日本語の学習はコツコツと継続して続けていくことが大切です。日本企業で働く外国人社員は、1日でも早く日本語を上達させ、今以上に社内でのコミュニケーションを円滑にしたいと努力を続けていることでしょう。

そんな日々の日本語学習を継続していくためにも、年に一度は日本語能力試験(JLPT)を受けて、自身の成長度合いを確認してみるのも良いかもしれません。逆に、企業の人事担当者は社内の外国人社員に日本語能力試験(JLPT)の受験を薦めてみてください。

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