日本語能力試験(JLPT)のN1は、試験内でもっとも難しく、高い日本語の認定レベルです。
継続的な日本語学習の末、到達するレベルであることは間違いありませんが、N1レベルの認定を受けている外国人社員は高い日本語の読解力・聴解力を持っていることを示します。そんなN1レベルとは、具体的にどのような語学レベルであるのか、またN1試験の問題例をご紹介します。
日本語能力試験(JLPT)とは
日本語能力試験(JLPT:Japanese-Language Proficiency Test)とは、日本語を母語としない人を対象にした日本語能力を認定する語学検定試験です。国際教育支援協会と日本国際教育支援協会の2団体が運営しており、試験は基本的に毎年7月と12月の年2回行われます。
日本語能力試験(JLPT)の試験科目と試験時間は以下の通りです。
レベル | 試験科目 |
N1 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解 = 110分聴解 = 60分 |
N2 | 言語知識(文字・語彙・文法)・読解 = 105分聴解 = 50分 |
N3 | 言語知識(文字・語彙)= 30分言語知識(文字)・読解 = 70分聴解 = 40分 |
N4 | 言語知識(文字・語彙)= 30分言語知識(文字)・読解 = 60分聴解 = 35分 |
N5 | 言語知識(文字・語彙)= 25分言語知識(文字)・読解 = 50分聴解 = 30分 |
※ 参考元:日本語能力試験 JLPT「試験科目と問題の構成」
日本語能力試験(JLPT)の全体に関する概要は、以下にまとめていますのでよろしければ合わせてお読みください。
<詳しくはこちらをお読みください>
日本語能力試験(JLPT)とは?受験までの流れや費用・N1〜N5のレベルの違いや受けるメリットを解説
N1の日本語のレベル目安
N1レベルは、日本語能力試験(JLPT)でもっとも高い日本語の認定レベルです。日本語能力試験(JLPT)の公式ホームページには、「読む」「聞く」のスキルは以下のようにまとめられています。
スキル | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
「読む」 | ・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる |
「聞く」 | ・幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる |
※ 引用元:日本語能力試験 JLPT「N1~N5:認定の目安」
N1認定者のCan-do自己評価リスト
日本語能力試験(JLPT)の公式ホームページでは、各認定レベルの合格者が日本語でどのようなことができるようになったと自覚しているかを調査した「Can-do自己評価リスト」が発表されています。
以下の調査結果は、N1レベル認定者の日本語能力を保証するものではありませんが、N1レベルの方がどのような日本語のスキルセットなのか理解するのに良い指標です。2012年10月に発表された「Can-do自己評価リスト」は、以下の概要で調査が実施されました。
調査時期 | 2010年9月~2011年12月 |
調査実施地 | 日本・韓国・中国・ベトナム・マレーシア・インド・オーストラリア・アメリカ・カナダ |
調査対象者数 | 64,842人(2010年および2011年のJLPT受験者数は約120万人) |
調査対象者中の合格者数 | 33,979人(日本10.7%、韓国33.0%、中国40.3%、ベトナム11.1%、マレーシア1.4%、インド2.3%、オーストラリア0.4%、アメリカ0.2%、カナダ0.7%) |
調査実施方法 | 質問紙によるアンケート調査(受験会場および受験者の学習機関での筆記調査、オンライン調査) |
N1認定者の「聞く」スキルの自己評価
No. | 質問項目 | 「できる」と回答した割合 |
1 | フォーマルな場(例:歓迎会)でのスピーチを聞いて、だいたいの内容が分かる | 25~50% |
2 | 思いがけない出来事(例:事故)についてアナウンスを聞いてだいたい理解できる | 25~50% |
3 | 仕事や専門に関する問い合わせを聞いて、内容が理解できる | 25~50% |
4 | 関心あるテーマの講義や講演を聞いて、だいたいの内容が理解できる | 25~50% |
5 | 学校や職場の会議で、話の流れが理解できる | 50~75% |
6 | 関心あるテーマの議論や討論で、だいたいの内容が理解できる | 50~75% |
7 | 身近な日常的な内容のテレビ番組(例:料理・旅行)を見て、だいたいの内容が理解できる | 50~75% |
8 | 身近で日常的な話題(例:旅行の計画・パーティーの準備)についての話し合いで、話の流れが理解できる | 50~75% |
9 | 標準的な話し方のテレビドラマや映画を見て、だいたい理解できる | 50~75% |
10 | 店で商品の説明を聞いて、知りたいこと(例:特徴)がわかる | 50~75% |
11 | 駅やデパートでのアナウンスを聞いて、だいたい理解できる | 50~75% |
12 | 周りの人との雑談や自由な会話で、だいたいの内容が理解できる | 75%以上 |
13 | 身近で日常的な話題(例:趣味・食べ物・週末の予定)についての会話だだいたい理解できる | 75%以上 |
14 | 簡単な指示を聞いて、何をすべきか理解できる | 75%以上 |
15 | 先生からのお知らせを聞いて、集合時間、場所などがわかる | 75%以上 |
16 | 店、郵便局、駅などでよく使う言葉(例:いらっしゃいませ)を聞いて、理解できる | 75%以上 |
17 | 教室で、先生や友達の簡単な自己紹介を聞いて、理解できる | 75%以上 |
N1認定者の「話す」スキルの自己評価
No. | 質問項目 | 「できる」と回答した割合 |
1 | 関心ある話題の議論や討論に参加して、意見を論理的に述べることができる | 25~50% |
2 | 最近メディアで話題になっていることについて質問したり、意見を言ったりすることができる | 25~50% |
3 | 思いがけない出来事(例:事故)の経緯と原因について説明することができる | 25~50% |
4 | 相手や状況に応じて、丁寧な言い方とくだけた言い方が使い分けられる | 25~50% |
5 | 最近見た映画や読んだ本のだいたいのストーリーを紹介することができる | 50~75% |
6 | クラスのディスカッションで、相手の意見に賛成か反対かを理由とともに述べることができる | 50~75% |
7 | 準備をしていれば、自分の専門の話題やよく知っている話題についてプレゼンテーションすることができる | 50~75% |
8 | 友人や同僚と、旅行の計画やパーティーの準備などについて話し合うことができる | 50~75% |
9 | アルバイトや仕事の面接で、希望や経験を言うことができる(例:勤務時間) | 50~75% |
10 | よく知っている場所の道順や乗り換えについて説明することができる | 75%以上 |
11 | 準備をしていれば、自分の送別会などフォーマルな場で短いスピーチをすることができる | 75%以上 |
12 | 店で買いたいものについて質問したり、希望や条件を説明したりすることができる | 75%以上 |
13 | 電話で遅刻や欠席の連絡ができる | 75%以上 |
14 | 身近で日常的な話題(例:趣味・週末の予定)について会話ができる | 75%以上 |
15 | 相手の都合を聞いて、会う日時を決めることができる | 75%以上 |
16 | 驚き、嬉しさなどの自分の気持ちと、その理由を簡単な言葉で説明することができる | 75%以上 |
17 | 自分の部屋について説明することができる | 75%以上 |
18 | 趣味や興味のあることについて、話すことができる | 75%以上 |
19 | 店、郵便局、駅などでよく使われる言葉(例:いくらですか)を使って、簡単なやりとりができる | 75%以上 |
20 | 自己紹介をしたり、自分についての簡単な質問に答えたりすることができる | 75%以上 |
N1認定者の「読む」スキルの自己評価
No. | 質問項目 | 「できる」と回答した割合 |
1 | 政治、経済などについての新聞や雑誌の記事を読んで、要点が理解できる | 25~50% |
2 | 論説記事(例:新聞の社説など)を読んで、主張・意見や論理展開が理解できる | 25~50% |
3 | 人物の心理や話の展開を理解しながら、小説を読むことができる | 25~50% |
4 | エッセイを読んで、筆者の言いたいことがわかる | 50~75% |
5 | 関心のある話題についての専門的な文章を読んで、だいたいの内容が理解できる | 50~75% |
6 | 敬語が使われている正式な手紙やメールの内容が理解できる | 50~75% |
7 | 仕事相手からの問い合わせや依頼の文書を読んで、理解できる | 50~75% |
8 | 身近で日常的な話題についての新聞や雑誌の記事を読んで、内容が理解できる | 50~75% |
9 | 旅行のガイドブックや、進学・就職の情報誌を読んで、必要な情報がとれる | 50~75% |
10 | 一般日本人向けの国語辞典を使って言葉の意味が調べられる | 75%以上 |
11 | 商品のパンフレットを見て、知りたいことがわかる(例:商品の特徴) | 75%以上 |
12 | 短い物語を読んで、だいたいのストーリーが理解できる | 75%以上 |
13 | 知人や友人から来たはがきやメールを読んで、理解できる | 75%以上 |
14 | 学校、職場などの掲示板を見て、必要な情報(例:講義や会議のスケジュールなど)がとれる | 75%以上 |
15 | 新聞の広告やチラシを見て、安売り期間や値段などがわかる | 75%以上 |
16 | 駅の時刻表や案内板を見て、自分が乗る電車の時間がわかる | 75%以上 |
17 | 年賀状や誕生日のカードを読んで、理解できる | 75%以上 |
18 | 簡単なメモを読んで、理解できる | 75%以上 |
19 | 絵のついた簡単な指示(例:ゴミの捨て方、料理の作り方)がわかる | 75%以上 |
20 | 学校などで面談の予定表を見て、自分の面談の曜日と時間がわかる | 75%以上 |
N1認定者の「書く」スキルの自己評価
No. | 質問項目 | 「できる」と回答した割合 |
1 | 論理的に意見を主張できる文章を書くことができる | 25~50% |
2 | 思いがけない出来事(例:事故など)について説明する文章を書くことができる | 25~50% |
3 | 料理の作り方や機械の使い方などの方法を書いて伝えることができる | 25~50% |
4 | 自分の関心のある分野のレポートを書くことができる | 50~75% |
5 | 目上の知人(例:先生など)宛てに、基本的な敬語を使って手紙やメールを書くことができる | 50~75% |
6 | 自分の送別会などで挨拶スピーチの原稿を書くことができる | 50~75% |
7 | 学校や会社への志望理由などを書くことができる | 50~75% |
8 | 最近読んだ本や見た映画のだいたいのストーリーを書くことができる | 50~75% |
9 | 理由を述べながら、自分の意見を書くことができる | 50~75% |
10 | 体験したことや、その感想について、簡単に書くことができる | 75%以上 |
11 | 知人に、感謝や謝罪を伝える手紙やメールを書くことができる | 75%以上 |
12 | 将来の計画や希望(例:夏休みの旅行)について簡単に書くことができる | 75%以上 |
13 | 短い日記を書くことができる | 75%以上 |
14 | 友人や同僚に日常の用件を伝える簡単なメモを書くことができる | 75%以上 |
15 | 自分の家族や町などの身近な話題について簡単に書くことができる | 75%以上 |
16 | 予定表やカレンダーに、短い言葉で自分の予定を書くことができる | 75%以上 |
17 | 誕生日のカードや短いお礼のカードを書くことができる | 75%以上 |
18 | 簡単な自己紹介の文を書くことができる | 75%以上 |
19 | 書類に、名前や国名などを書くことができる | 75%以上 |
N1の問題例
N1レベルでは以下のような問題が出題されます。
なお以下の出題例は、「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」の中の「文字・語彙」のテスト内容です。日本語能力試験の試験内容のなかには、他にも「文法」や「長文読解」そして「聴解」に関する試験内容が含まれています。
問題1 _____の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。(1) 彼は今、新薬の研究開発に挑んでいる。 1 はげんで 2 のぞんで 3 からんで 4 いどんで(2) 住民が建設会社を相手に、訴訟を起こした。 1 そしょう 2 せきしょう 3 そこう 4 せっこう問題2 次の言葉の使い方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。(1) いたわる 1 弱い立場の人をいたわるのは大切なことです。 2 山田さんはこれまでの努力をいたわってくれました。 3 母は孫が遊びに来たら、いつもいたわっていました。 4 政治家は国民の生活をいたわるべきです。(2) キャリア 1 その分野のキャリアになるには、長い間の努力が必要だ。 2 先月賞を取ったあの歌手のキャリアは苦労続きだったそうだ。 3 昨日、異動の発表があって、兄のキャリアは部長になった。 4 彼のキャリアはそれほど長くないが、この仕事をよく理解している。 |
最終的なゴールとしてN1レベルを目指してみては?
日本語能力試験(JLPT)におけるN1レベルは、全ての外国人社員が目指すべきか…というとそうではありません。N1レベルまで取得しなくとも、日本の会社内で円滑に業務を進めることは可能だと思います。
しかしながら、日本語能力を客観的に確かめるための最終的な目標としてN1レベルを目指すのは大変素晴らしいことです。もし、社内の外国人社員が日本語能力試験(JLPT)に取り組んでいるのであれば、会社として日本語研修を実施するなどサポートを行うのもおすすめです。
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